特別講座6

「今こそオンラインで学ぶ 学」

-世界はどうしてる?自分たちはどうする?-

オンデマンド講座(フルバージョン)
 
40分版

  • 講師:石坂貴明先生、林寛平先生、稲垣忠先生、松尾敏実先生、大家淳子先生
  • 日時:2020年7月12日(日)

講座レポート

第6回目の特別講座は初のリモート開催で、ずばり「オンライン学習」がテーマ。コロナウイルスによって世の中がガラリと変わり、学校も仕事もコミュニケーションも、日常生活のオンライン化が急激に進んでいます。とくに教育の現場では、試行錯誤しながら手探りで進めている先生や学生たちも多いのでは?そこで、情報教育の第一人者や現役教師など5人の講師をお迎えして、オンライン学習の在り方について熱く語っていただきました。

2部構成の講座は、YouTubeチャンネルでライブ配信され、講師の皆さんは佐賀や東京、宮城など各地から参加。初のオンライン講座ということで、スタッフ一同、機材や通信状況のチェック、画面の切り替えなど入念にテストを繰り返し、会場には始まる前から緊張感が漂っていました。

いよいよライブ配信がスタート!おなじみ、お目付役の倉成英俊さんのお話しから始まり、本日2人目のお目付け役として、ベネッセ教育総合研究所の石坂貴明先生が登場。倉成さん曰く「日本中の学校を一番見まくっている人!」ということで、今回の講師陣のセレクトも石坂先生のアドバイスがあってこそ。そんな石坂先生から「そうそうたる先生たちが参加されて、とにかく嬉しくて楽しみ!皆さんと一緒に学びたい」というコメントをいただき期待が高まります。

第1部は「オンライン学習のいまとこれから」がテーマで、1人目の講師として、世界中のオンライン教育に詳しい信州大学准教授の林寛平先生が登場。

スウェーデンの小中学校で教えていた経験もあり、「コロナの影響で、世界の9割以上の子どもたちが授業を受けられない事態になったのは教育史上初めて。こんな時代を経験するのは貴重なこと」と、最新データや事例をもとに世界のオンライン教育の現状を教えてくれました。

コロナのせいで新しい教育の在り方を探りだしたとき、すでにオンライン学習を取り入れていたのがスウェーデンの学校です。Wi-Fiさえつながっていたら勉強する場所はどこでもOK。ソファーに寝転がって授業の動画を見ている生徒もいます。「どうすれば先生が教えやすいかではなく、どうすれば子どもたちが学びやすいか、を考える時代になってくる。そうなると学校とは一体なんなのか。授業を受ける場所なのか、友達と会う場所なのか…」と問題提起をする林先生。

時間や空間にとらわれず、いつでも、どこでも、誰でも学べるのがオンライン学習。それを使って、どういう社会を作りたいかが大切で、「みんなが学ぶことで社会が良くなっていくという、実感がわく社会になって欲しい。今だからこそ、学校にいるからこそ、日本にいるからこそできること、その人らしい価値を生み出すようなオンライン学習を考えていく必要があると思います」と林先生は語ります。

第1部の2人目の講師は、オンライン教育の実践トップランナーである東北学院大学教授の稲垣忠先生。

数々の最新事例を教えていただくなかで、「なるほど!」と思ったのは、ひと口にオンライン学習といってもさまざまなタイプと段階があるということ。ライブ配信などのリアルタイム(同期)なのか、動画配信などのオンデマンド(非同期)なのか。それに加え、一方向なのか双方向なのか。最近は、オンライン=リアルタイムでやりとりできるもの、という風潮があるけれど、「大事なのは双方向かつ非同期のもの」と稲垣先生。例えば、先生が出した課題にレポートを提出すれば終りではなく、生徒たちが取り組んだものに対してオンラインでディスカッションするなど、双方向のやりとりが大切なのです。

そして印象的だったのは、「学校の先生が一生懸命動画を撮って配信しても、それは一方向。先生にはYouTuberになって欲しいわけではない」という言葉。対面授業も再開されている今、教育の現場はオンラインとリアルのハイブリッドへと進みつつあります。「先生には子どもとのやりとりで力を発揮してほしい。一律・一斉ではなく、個別最適化で子どもたち一人ひとりと向き合っていただきたい」と稲垣先生は語ります。

さあいよいよ第2部に突入。ネット上にアーカイブしている「弘道館2」の過去講座をどのように活用していくかを、佐賀県内の先生たちと考えます。

登場したのは、佐賀県の現場と行政を熟知する教育エキスパート、佐賀大学大学院学校教育研究科教授の松尾敏実先生と、佐賀県が推進するICT教育のスーパーティーチャー、みやき町立北茂安小学校の大家淳子先生です。

大家先生は、オンデマンド動画を教材に6年生の授業を実際にやってみました。選んだのは優木まおみ先生の「なりたい自分になる学」。動画を5分程度見て、子ども達仕様にアレンジしたワークシートを使って人生計画を書き込み、“なりたい自分”についてみんなの前で発表するという授業です。子どもたちのワークシートを見るだけでも、一人ひとりの個性が表れていて、楽しそうな授業の様子が伝わってきました。

松尾先生は、「夢や才能のきっかけを作るという、弘道館2のコンセプトがどの講座にも反映されていて、教材として使えるコンテンツばかり」と語り、高校生や大学生に聞いてもらいたい講座として、水町勇一郎先生の「働くとは?学」をセレクトしました。「実際の講義のときも、高校生を含めいろんな人たちがコメントを寄せていたので、本当にいい講座だったと感じています」。そんな松尾先生がオンラインでやってみたいのは会読。いわゆるディスカッション付き読書会で、「本を読んできた学生たちが、オンラインでディスカッションするのも面白い」と構想が膨らみます。

まるでオンライン会議の一場面のようですが、最後は全員集合!

お目付け役の石坂先生は「今回の講座で、一冊の本ができそうな深さと面白さがあった」と大絶賛。さまざまな意見が飛び交うなかで、稲垣先生は「オンライン上にはいろんなことを教えてくれるコンテンツがあり、自学自習が広がるなかで、それぞれの学び方を先生がどう支援していくかが大事になってくる」、林先生は「教室の壁はなくなり、先生が黒板の前に立つことがなくなり、まさにいろんな垣根がなくなって、学びの維新ですね」と締めくくってくれました。

今回最大で約200人が視聴し、年齢も学生から社会人までと幅広く、シンガポールからの視聴もありました。チャットを利用し、リアルタイムでコメントを送る方も多く、まさにオンラインの強みを感じる講座となりました。ライブ配信を終えた佐賀会場で、松尾先生は「第1部の講義は本当に面白かった。改めて、オンラインの活用で学び方はどんどん広がっていくと実感しました」、大家先生は「学びを広げていくのは子どもたちだけれど、私たちはそのきっかけをコーディネートする存在でありたい」と語ってくれました。私たちの新しい生活様式に欠かすことのできないオンライン。弘道館2の新しい学びのスタイルがスタートした、記念すべき日となりました。

 

講師

石坂 貴明
ベネッセ教育総合研究所 主任研究員

林 寛平
国立大学法人 信州大学准教授

稲垣 忠
学校法人東北学院 東北学院大学教授

松尾 敏実
国立大学法人佐賀大学大学院 学校教育学研究科教授

大家 淳子
みやき町立北茂安小学校教諭
佐賀県スーパーティーチャー認証(ICT利活用)

 

予告動画