特別講座11

「答えのない読書術」

-自分のスキの伝え方教えます-

オンデマンド講座(フルバージョン)
 
40分版

  • 講師:本間 悠 先生(カリスマ書店員)
  • 日時:2022年10月29日(土)
  • 会場:佐賀県立図書館 こころざしの森

講座レポート

今回は、本好きの子どもたちのための特別講座「答えのない読書術」です。講師に迎えたのは、全国の書店員・出版社関係者から“カリスマ書店員”と呼ばれる本間悠先生。たくさんの人に注目されるきっかけとなったのは、本の魅力を伝えるために手作りしていた売り場のポップでした。作り方のコツを伝授してもらおうと、講座後半ではポップ作りにチャレンジします。参加してくれた18名の子どもたち(小学4~6年生)も、きっとこのワークショップがお目当てのはず。どんなポップができあがるか、とっても楽しみですね!

まずは、本間先生のお話からスタート。ちょっと緊張気味の子どもたちをリラックスさせようと、本屋さんクイズを出題。「一年に何冊の本が出版されているでしょうか?」①700冊、②7,000冊、③70,000冊の3択で、②と③で答えが分かれましたが、正解は③!平均すると1日に約200冊の新刊が出版されていることになり、これには漫画本は含まれていないそうです。

「これだけ本があるけど、みんなはどうやって本を選んでるの?」と質問する本間先生。「友だちにすすめられたから」、「タイトルやあらすじが面白そうだったから」、「絵がかわいいから」など、きっと理由はさまざまなはず。

「子どもに”好きな本を買ってあげる”と言っておきながら、大人は子どもが選んだ本を見て、”他のにしなさい”、”漫画はダメ”、なんて言ってしまうことがある。本の選び方に正解はないし、本を読むことにも正解はない。だって、本を読みたくない、何が面白いか分からなという子もいるから。本を読むことは自由だし、答えがないことだと思っています。お父さん、お母さんには、子どもたちの“本を読みたい!”という気持ちを大切にしてほしい」と本間先生。

お話の中でとくに印象的だったのは、「読書とは心の中に引き出しを作ること」という言葉。植物の本を読んだら植物の引き出しができるし、読んだ本の数だけ自分の中に特別な引き出しができると言います。「たくさん引き出しを持っていれば、いつかその引き出しが君たちを助けてくれるかもしれない。本は読んでも読まなくてもいいけれど、読んだほうが引き出しも増えていきます」と、呼びかける本間先生の言葉を、子どもたちは目をキラキラ輝かせて聞いていました。

さあ!後半は、お楽しみのポップ作りです。参加者には色画用紙や色鉛筆など道具が配られ、自分が好きな本のポップを作っていきます。

「書くのは3つだけ。①キャッチコピー ②内容の説明やおすすめの理由 ③タイトルと作家さんの名前です」と本間先生。①のキャッチコピーは、タイトルに入っている言葉や、本の中で自分が気に入ったセリフでもOK。②は簡単なあらすじや、読んだときに自分がどう思ったか感想を書くのもおすすめです。

子どもたちの席を順番にまわりながら、「イラストを描いたら遠くからでも分かりやすい。絵が苦手な人は文字だけでいいし、ポップの形を工夫してみるのもいい」などアドバイス。本間先生がお手本として見せてくれたポップは、細かなこだわりも多く、思わず本を手に取りたくなる工夫が満載でした。一つのポップを作るのに、通常3~4時間かけているという制作工程を早送りの動画でも見せてくれました。

会場での制作時間は50分くらいで、時間内で完成しなかった子どもたちもいましたが、「最後まで仕上げたい!」と講座終了後も熱中してポップを制作していました。子どもたちの手作りポップは力作ぞろいで、佐賀県立図書館で本と一緒に展示してもらっています。※希望者のみで期間限定

恒例の佐賀弁メッセージでは、自由に本を読むことを楽しんでほしいという願いをこめて、「好きなごと本ば読みんしゃい!」と本間先生。姉弟で参加した、北茂安小学校6年生の佐々木恵美さんと5年生の大輔くんは、二人そろって大の本好き。「先生のお話がとても分かりやすかった。ポップ作りもとても楽しかった」と大満足でした。

講座を終えた本間先生は、「子どもたちの発想が、とても素晴らしかった。ポップを作ることで、この本の魅力ってなんだろう、自分ってどこが好きだったんだろうと考えるきっかけになる。いろんなことに応用できる技術だと思うので、ぜひこれからもやってほしい」とエールを送りました。

読書のいいところは、佐賀にいながら世界中を知ることができるし、自分とは違う人生の疑似体験だってできること。もっと自由に、もっと楽しく本を読んで、たくさんの引き出しを作っていきましょう。それがきっと夢を叶えるチカラに、未来の可能性を広げるきっかけになるはずです。

 

講師プロフィール

本間 悠/カリスマ書店員

大谷桃子

1979年生まれ、佐賀市在住。2015年より明林堂書店南佐賀店で勤務し、手作りしていた売り場ポップが話題に。本間さんが選ぶ「ほんま大賞」にノミネートされた本は、「本屋大賞」に選ばれた作品より売れると言われ、全国の書店員・出版社関係者から「カリスマ」と呼ばれた。 現在は、うなぎBOOKS(福岡県八女市)にてマネージャーを務める。