12時間目

「働くとは?学」水町勇一郎先生

-仕事と趣味、どっちを生きがいにする?-

 
  • 講師:水町勇一郎 先生(東京大学教授)
  • 日時:2019年8月31日(土)
  • 会場:ものづくりカフェこねくり家

講座レポート

12時間目の講座のテーマは、現在もっとも旬なテーマの一つである「働き方」。「働くことは、喜びか、苦しみか?」のキャッチコピーに受講者に加え、大人の観覧者もスタッフも興味しんしん。講師は佐賀市久保田町出身で東京大学教授の水町勇一郎先生。政府の「働き方改革実現会議」のメンバーも務め、労働法がご専門のまさに「働き方」を考えるプロです。会場となった古民家「ものづくりカフェこねくり家」では熱いトーク&ディスカッションが繰り広げられました。

おもしろい経歴を持つ先生。職業となる労働法に行きつくまでに進路をいろいろ変えたと語ります。その選択方法はなんと消去法。将来、職業の選択肢が広がるだろうと東京大学理科Ⅱ類へ進学、大学2年の時に実験や機械が苦手と気づき、法学部へ文転。「体験してからこそ、わかることがある」と水町先生。4年の時に公務員試験を受けるのをやめて研究者の道を選んだのも、そっちの方が楽で面白そうだなと思ったからだそう。

メインのディスカッションはQ&A方式。「仕事と趣味、どっちを生きがいにしたい?」
「真面目に働くことをよしとするドイツ、働くことより別のことを楽しむイタリア、どちらに住みたい?」-究極の質問に悩みながらも活発に答えていく受講者たち。会場の熱気はどんどん高まっていきます。じっくり耳を傾け、受講者たちの意見にアドバイスをしていく水町先生。「みんな意見は違って当たり前。そしてこのQ&Aに正解はありません。考えて議論をするというプロセスが大事なんです」と持論を展開してくれました。

それから講座のテーマは、人類の働き方の歴史に突入。“労働が罪をつぐなうための罰”だったというローマ帝国下で発展したカトリックの労働観から、宗教改革を経て“労働は神から与えられた自由”へと変化したヨーロッパの労働観について、壮大な話題に会場のみんなも身を乗り出します。もちろん日本の労働観も紹介。家業として始まった労働は家族のために奉仕する、共同体・企業に仕えるという意味が強く、その意識が根底にある限り、時代や考え方が変わっても労働をとりまく社会自体は変わらないと水町先生。

「根本から考えて。働くのが好きと言っている人、本当に好きですか?実は“働くことはいいこと”という労働観を社会から無意識に押し付けられていませんか?真面目に働くことが常識だと思い込んでいませんか?」という鋭い質問に考え込む受講者たち。過労死など課題を抱える日本で、今後どう働き方を改革していったらいいか、議論は続きました。

水町先生の熱弁に大いに刺激を受けた会場のみんな。「これからのテーマは“多様性”。専門的な学問を経て働くことも大切ですが、さまざまな学問領域を自由に学び教養を身に付けていけば、自分だけの価値観で働くことができますよ!」と水町先生は力強い口調で締めくくった後、流暢な佐賀弁でメッセージを送ってくれました。

「社会はどんどん変わりよう。学校でも社会でも好きなこと学ばんね。理文の境目がないように、好きなことをやっていけば仕事と趣味、そうでないことの境目もなくなるとよ。佐賀の田舎で育った人は伸びしろがあるけんね。自然を駆け回れる人は実社会でも強いけんが、のびのびと生きてくんしゃい!」。

最後には水町先生のサイン付きの修了証が授与され、瞳を輝かせる受講者たち。佐賀大学医学部4年生の横田栞さんは、「講座を受け、すべての問題の根本は目的を知らないことと気づいた。この多様な時代、もっと深く考え、周囲の人と議論するきっかけを持ちたい」と意欲的に感想を語ってくれ、受講者をはじめ、観覧者、スタッフにとって働くこと、そして生き方をあらためて考えた、大変貴重な時間となりました。

告知動画

講師プロフィール

1967年佐賀県生まれ。1980年久保田町立思斉小学校卒業。1983年久保田町立思斉中学校卒業。
1986年佐賀県立佐賀西高校卒業。1986年東京大学理科Ⅱ類入学。1990年東京大学法学部卒業。東北大学法学部助教授、パリ西大学客員教授、ニューヨーク大学ロースクール客員研究員等を経て、現在、東京大学社会科学研究所教授。
働き方改革実現会議議員、東京都労働委員会公益委員(会長代理)、規制改革会議雇用WG専門委員などを歴任。
主な著書に、『労働法〔第7版〕』(2018年、有斐閣)、『「同一労働同一賃金」のすべて』(2018年、有斐閣)、『労働法入門』(2011年、岩波書店)、『労働法改革』(編著、2010年、日本経済新聞出版社)、『集団の再生―アメリカ労働法制の歴史と理論』(2005年、有斐閣)、『労働社会の変容と再生-フランス労働法制の歴史と理論』(2001年、有斐閣)、『パートタイム労働の法律政策』(1997年、有斐閣)など。